日本の音響制作会社のBloomZは最近、Nasdaqでそのケイマン諸島持株会社を上場しました。弊事務所は日本の事業会社のケイマン諸島持株会社によるIPOに従事しており、日本企業が香港またはNYSE/Nasdaqで上場する際にかかるケイマン諸島持株会社ストラクチャーを採用することがなぜ有益なのか、本稿でご説明したいと思います。

ケイマン諸島会社による上場の利点

ケイマン諸島会社には、政治的・経済的安定性、効率的な司法制度(イングランド枢密院への最終控訴権がある)、有利な税制、外国為替管理や通貨規制の不在、充実した専門家のサポートサービス等、多くの利点があります。

ケイマン諸島会社の株式は、世界中の取引所で上場されています。例えば、香港に上場している2,500社以上の企業のうち1,770社はケイマン諸島会社で、NYSE/ Nasdaqにも450社以上のケイマン諸島会社が上場しています。投資家、引受会社、規制当局、アナリストその他サービスプロバイダーは、ケイマン諸島会社の上場に精通しています。

本国慣行

NYSE/Nasdaqへの上場を検討している企業は、FPI(foreign private issuer)ステータスを有する非米国会社を上場させることにより、米国籍上場会社に適用される証券取引所法の特定の規定から免除されることにご着眼ください。また、ケイマン諸島籍上場会社は、コーポレート・ガバナンスに関する特定の本国慣行を採用できるため、上場後の企業運営が容易となります。かかる「本国慣行」は一般的に、特定のコーポレート・ガバナンスに関する事項への株主関与の要件が緩和され、社名変更、清算、定款変更を含む重要事項を除き、取締役が会社の事業及び運営を管理します。

税金

ケイマン諸島会社は租税中立的なビークルで、ケイマン諸島政府は現在、その利益、所得またはキャピタルゲインに課税せず、相続税等もありません。ケイマン諸島内で締結されまたは締結後に持ち込まれた文書に課される印紙税を除き、ケイマン諸島会社に重要となりうるその他の税金はありません。

したがって、(i) IPO前に日本会社の株式を取得するためにケイマン諸島会社が行う株式交換に関し、ケイマン諸島における税金や印紙税は発生せず、(ii) ケイマン諸島会社の株式に対する配当金や出資はケイマン諸島で課税されず、かかる配当金や出資に係る源泉徴収もありません。また、株式の処分から得られたキャピタルゲインに対しても、ケイマン諸島で所得税や法人税は課されません。

ケイマン諸島会社の多くは、以下を含む誓約書を政府から取得します。
– 当該会社の利益、所得またはキャピタルゲインに税金や関税を課す法律が将来制定されたとしても、かかる税金や関税は、誓約書の日から20年間は当該会社またはその事業に課されないこと
– (a)当該会社の株式、社債その他の債務上もしくはそれらに関し、または (b)ケイマン諸島租税優遇措置法上定義される関連支払の一部もしくは全部に源泉徴収による方法で、利益、所得、キャピタルゲインに対して課される税金や、相続税の性質を有する税金が課されないこと

最後に、ケイマン諸島会社の株式を直接上場することで、預託証書(ADR)プログラムを設定する費用と手間を省くことができます。

詳細については、コンヤースの担当者またはリチャード・ホール弁護士にお問い合わせください。

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